津和野高校魅力化について

おはようございます。
町長付ふくいです。

先日、島根県の海士町で『島の経営会議』があり、改めて津和野高校魅力化について県立隠岐島前高校で活躍なさる岩本さんや、魅力化担当課長吉元課長、隠岐國学習センター長の豊田さんと意見交換を行う機会がありました。

そこから、改めて津和野高校魅力化について考えをまとめたので、ブログを書いてみます。
単なる記録として書き留める気はないので、相当長いものになります。
どうか最後までお付き合いください。

それから、このブログにはコメント欄があり、また僕のFacebookページへのリンクもあります。
『ふむふむ、そうか』
で終わることなく。
『いや、それは違うだろ』
『じゃあ、どうやって実行していくんだ』
など、この場を活発な意見交換の場にしていただければ幸いです。

では、本題です。
最初に、スライドを埋め込んでおきます。
フルスクリーン表示できるようにしておきますので、このPDFを見ながら、ブログを読み進めてください。



津和野高校魅力化レジュメ from kenyamyam

1)津和野町の現状
 改めて言うまでもなく、津和野町は全国でもトップクラスの高齢化が進んでおり、高齢化率は約41%、少子化率は10%程度です。ここでは、『津和野高校の存在と町の将来』という文脈で話を進めていきます。

 津和野高校がなくなるかもしれない、ということは数年前から語られてきていますが、『では、なくなったらどうなるのか』を豊かな想像力をもって考えている人はそう多くはないのでは無いかと感じています。

 津和野高校がなくなると、どうなるのか。まず、高校生世代の人口が激減します。津和野高校がある今でさえ、部活動や夢のために津和野以外の高校に進学する生徒が少なくありません。益田高校や、翔陽高校に進学し、津和野から通学するならまだしも、大社高校や松江北高校に進学し、下宿するという生徒もいます。津和野高校がなくなると、この生徒の流出が一層進むことになります。これは、単に津和野から生徒がいなくなるということにとどまらず、町内の経済実態を変形させることにもつながります。と、いうのも、津和野で稼いだお金が、下宿費や生活費のために出雲市や松江市に流れることになれば、津和野の経済圏に流れてくるキャッシュ・フローが今よりももっと縮小するということで、津和野の経済にも少なからず影響を与えます。

 また、こういった生徒の流出が進めば、高校生世代の生徒を抱える家族が一家揃って出雲市や松江市に流出、ひいては県外に流出することにも繋がり、高校生世代だけでなく、その親世代の人口も津和野から流出することになります。高校生世代の親世代というのは、まさしく津和野の担い手である生産者人口であり、この人口が減少すると、津和野町にはもはや高齢者しかいなくなってしまいます。

 加えて、高校がなくなることで、IターンやUターンも見込めなくなるでしょう。いくら素敵な自然と文化に恵まれた町であったとしても、高校まで子どもを育てられないということになれば、子連れのIUターン希望者が町に来ることは考えにくいです。

 ここまで述べると、津和野高校の存在が、町の将来を考えるにあたり非常に重要なものであることがおわかりになるかと思います。津和野高校の存続は、単なる県立高校の存続問題ではなく、『町として必要な機能』がなくなるかどうか、つまり、病院や公共交通など生活インフラがなくなるかどうか、という議論と同じ土俵で議論されるべきことなのです。


2)津和野高校を取り巻く現状
 さて、津和野高校に目を向けてみましょう。津和野高校の定員は2クラス80名ですが、現在入学者数は約55人程度で推移しています。定員に対する入学者の割合(入学者充足率)は78.8%です。島根県の教育委員会は統廃合の目安として、この入学者数充足率が60%を下回らないことを提示しています。津和野高校の場合、入学者が48名を下回ると、クラス減の対象校となるということです。

 津和野高校の入学者の内訳を見てみると、90%が県内出身、内57%が津和野町内出身です。20%程が益田からの進学で、残り10%程度が山口を含む県外出身者です。一昨年から取り組み始めた全国募集で入学した生徒はごく僅かです(数人程度)。

 ここで、興味深い数字があります。津和野町内の中学3年生の内、どれほどの生徒が津和野高校に入学しているか、という数字です。(左下のグラフ)これを見ると、町内の約半数しか津和野高校に進学しておらず、残りの半数は益田を始めとする町外の高校に進学しています。この数字を踏まえて、鹿足郡内(吉賀町と津和野町の合算。割合は1:1程度)の中学3年生の人数の推移(右下のグラフ)を見てみると、年々減少していき、2017年にはついに100人を割る見通しになっています。このことは、同時に津和野高校に入学する津和野町内出身の生徒の数が減ることを意味しており、現在の数字のまま計算すると2017年には津和野町内から津和野高校に進学する生徒は『25人程度』にまで減ってしまいます。

 これらのグラフからなにが読み取れるかを考えます。
①津和野町内の中学生が津和野高校に進学する割合が低い。
②全国募集を行っているが、あまり効果があがっていない。
③鹿足郡内の中学生は年々減少しており、益田地域でも同様である。

 これらを踏まえた上で、総合的に津和野高校が取りうる指針を示すとすれば、
①町内からの入学率を向上させる。
②県内での学生の取り合いを行うのではなく、県外からの入学者数を増やす。
この二つが指針として示す事ができます。

3)津和野町のリソース
 『津和野高校の存在と町の将来』というテーマでこの課題を捉えるにあたり、津和野町のリソースを把握しておきます。津和野高校の魅力化に関して、津和野町が持っているリソースのうち非常に有用なものが以下の4つです。

①多彩な文化行事
②充実した社会教育・社会体育事業
③IFJ・大学生の存在
④豊富な自然資源

①:津和野町には鷺舞神事や石見神楽を始めとする多彩な文化行事があり、これは高校が立地する土地の文化資源としては全国でもトップレベルにあると言えます。この文化行事を単なる行事として捉えるのではなく、これらを育んだ人と彼らの生業を活かして高校の魅力化を行っていくことで、津和野町が『ひとが生活する場所』としてもつ魅力を、高校の魅力に繋げることができ、高校単体ではなく、町とセットになった高校として魅力を打ち出していくことができます。


②:島根県では概して社会教育が盛んに行われています。津和野町も例外ではなく熱心な社会教育主事が役場に常駐し、町内には様々な社会教育事業や、社会体育サークルが存在します。それら地域リソースを高校の教育と接続することで、高校が担いきれない教育分野を社会教育団体が担うことができ、相互補完の関係の中でより生徒のためになる教育を行うことができます。


③:津和野町には大学が無いので、大学生がいない町になっていますが、IFJ事業で毎年大学生が来町します。彼ら自身が一流の大学に在学しているということに加え、彼らの人脈を活かすことで、さらなる交流人口の増加と、高校生にとってのロールモデル(憧れの的)を提示する方法を模索することができます。


④:津和野町には清流高津川を始めとする全国でも一流の豊富な自然資源があります。これらの自然資源をフィールドや題材として活かす教育プログラムを策定することにより、都市部では味わえない大自然の中での学びを提示することができます。


 高校の魅力化は、高校だけでは行えません。また、新しくなにか魅力的なものを見出すというのも、難しい話です。そこで、津和野町のもつリソースを使う。これにより、津和野高校だけではなく、津和野町全体の魅力を高校生活の魅力として打ち出し、県外生に対する魅力の一つとする。これが、高校魅力化の一つの指針です。

4)津和野町の課題
 『津和野高校の存在と町の将来』というテーマで考えを進めるにあたり、津和野町にはリソースと同じように、課題も存在することを忘れてはなりません。ここで、津和野高校魅力化に関する課題の一部を取り上げます。

①文化行事の後継者不足
②産業の担い手不足
③大学生世代がいない
④活用されない自然資源

①:津和野町には前述したように、多彩な文化行事があるにも関わらず、若年層人口の減少などに伴い、文化の後継者不足が課題になっています。文化とは、言うまでもなく、人によって受け継がれていくもので、後継する人間がいなくなればその文化も消滅してしまう。
 また、それらの多彩な文化行事に若者が中々参画できない現状も課題としてあげられる。そこで、これらの現状を解決しうる打開策が必要であると考えられる。

②:大学進学などで町を出た若者が帰ってくることが少ないことに加え、帰郷を促すポジティブな動機付けが体系的に行われていないため、津和野のあらゆる産業では担い手不足が叫ばれている。解決のためには、郷土愛と意欲を育む取り組みが必要になるであろう。
 補足説明しておくと、『帰郷を促すポジティブな動機付けが体系的に行われていない』というのは、形だけの郷土史教育、ふるさと教育は行われていても、『帰郷すること』がプラスイメージで捉えられるような事例を『おとなたち』が示せていないこと。二言目には『津和野にいても仕方が無い』と言ってしまう『おとなたち』がいること。動機付けや、意欲を育む取り組みが行われる前に、『とりあえず勉強しろ』『大学へ行け』と言う『おとなたち』が多いこと、などです。

③:津和野町には大学が無いので、大学生がいない町になっている。高校生にとっては少し年上のロールモデルがほぼいないことになり、このことにより、高校生にとっては、人生設計や進路設計、人格形成において、都市部に比べ大きなハンディキャップが生じていることは否めない。

④:津和野町には清流高津川を始めとする、全国でも一流と言える豊富な自然資源があるにも関わらず、これらは手つかずでうまく活用されていない。消費するだけでなく、保全しながら教育に活かすなど、活用する手だては多く存在するにも関わらず、そういった活用が行われていない現状がある。資源 は活用されないと手入れされなくなり、将来的には現在のすばらしい資源が失われてしまうかもしれない。

 先の項で『津和野のリソースを津和野高校の魅力化に活かす』ということを論じた。ここでは、これらの津和野の課題を、高校魅力化の過程で解決していくという指針を立てる。

 つまり、僕が考える津和野高校の魅力化とは、津和野のリソースを活用しながら、高校というものをテコにして、津和野の課題を解決していくこと、と定義づけられる。
 これは難しいことではない、高校の魅力化という手段をもってして、津和野町が抱える課題を解決していくだけのことである。つまり、高校にとっては魅力化により生徒増加につながり、町にとっては魅力化が実行されていくことで、一つ一つ町の課題が解決されていく、win-winの関係が築かれるのです。

県の機関だから。
課が違うから。
担当では無いから。
よその課に何故余計な仕事をふっかけられなければいけないの。
私は高校生でもないし、高校生の子どももいないから。

そんな言い訳をする時代は終わりました。

こんなの、前例がないじゃないか。
効果があるのか。
むちゃくちゃ言うな。
そんなことより実務で手がいっぱいなんだよ。
なんでおれがやらなきゃいけないんだ。

こんな言い訳をしている時間はありません。

格好悪くないですか。縦割りに捉われ、しがらみに囚われ、先例と慣習にばかりとらわれ、戦っているフリをして、座して死を待つに等しいことをしている、おとなたち!

子どもたちは、まっすぐ、透き通った瞳で見ています。

全部、ばれています。

余談になりますが、津和野の子どもたちと関わる僕にとって、すごく悲しいことがありました。

高校生の話です。
『学校の先生は、全然俺らを見ていない。どうせあの人たちは、転勤すれば津和野なんて関係ないんだし、「大学に何人進学したか」が大事で、俺らの人生とかどうでもいいんだろ』
進路指導で理不尽なことを言われた子が言っていた一言です。(高校の進路指導がすべて悪いというわけではありません)

『津和野のおとなは、格好良くない。だらだら働いているし、言うことは決まってる。「津和野なんかにいないで、都会に出ろ」そればっかり。こんなおとなの背中ばっかり見てると、ふんづけてやりたくなる。』
中学生と将来のことを話していた時に出た一言です。

『なんで、津和野にきたの?どうせなくなる町だよ?大阪とか東京の方がいいに決まってる。鮎とか、わさびとか、大したことない。町の偉い人たちはすぐにそんな決まり文句みたいな「津和野には鮎があります」なんて言うけど、僕は一回も食べたことないし、そんなことをいう偉い人の言葉にも心がこもっていない』
中学生と鮎掛けをしていたときにこぼれた一言です。

子どもたちは、僕らが考えるよりも、はるかに、はるかに、はるかにまっすぐな瞳で、日常のあらゆるものを捉えています。
こんな、言葉、もうこれ以上聞きたくありません。
彼らをして、こう言わしめているのは、

他でもない、僕らおとなの責任じゃないんでしょうか!


おとなたちが、かっこいい姿を見せて、『この背中を追いたい』『この町に恩返しがしたい』と思えるような町を作っていかないと、子どもたちがこういってしまうのも仕方が無いでしょう!

津和野の、全おとなたちに、問いかけます。


いまのままで、いいのですか!



僕は、いやです。
こんな子どもたちが育つ町、津和野らしくないです。
たくさんの偉人が育った町が、こんな町であっていいはずがない!
だから、魅力化に携わります。
少ししかできることはなくても、魅力化に全力を注ぎます。

5)魅力化の方向性
 では、どのように魅力化を進めていくか、これまでの話を踏まえて、考えていきたいと思います。批判や、陰口、反対意見なんて、恐れません。考えていることを、書く。これは、IFJのブログです。反応を気にして、当たり障りの無いことを書くくらいであれば、書かない方がましだと思っています。

 魅力化の方向性は4つあると考えています。
①現状維持
②一貫教育
③学力向上
④地域との接続

①:全国募集を行っていることと、一貫校を目指したが県の許可が下りなかったということで魅力化に終止符を打ち、座して死を待つという方策をとる。この方針で魅力化を進めるなら、町内の中学卒業者数が減少するに従い、定員の六割を割る入学者数しか入学しなくなり、統廃合は余儀なくされる。また、立地条件から益田高校に統合され、津和野高校は廃校になることは想像するに難しくない事態である。 津和野町の将来を考えるのであれば、最も取るべきでない手段。

②:中高一貫教育を推進し、6年間で手厚い教育を行おうとする案。町内の生徒の囲い込みとしては非常に有益な手段であるが、そもそも一貫教育に効果があるかどうかは定かでは無い。加えて、『併設型』『同一学校型』 の一貫校は県が認めないため実施することができない。可能性としては『連携型』の一貫教育があるが、それらの違いさえわからぬまま推進するようでは、到底一貫教育が行われる見通しが立たないであろう。また、一貫教育を行ったところで、町内の人口が減れば、統廃合は避けられなくなる点で取るべきではない方策。

③:学力向上を魅力化の第一義の指針に掲げる案。進学実績を高め、それにより全国から生徒を募集しようとするもの。現状維持案よりも浅はかな案である。考察は後述するが、片田舎の一県立高校が学力で都市部の私立高校にかなうはずがない。また、津和野町内の中学生がそのような高校を求めているという統計も出ていない。現実的な視点が欠けた、短絡的で、これまでの『失敗』を全く活かしていない案。しかし、学力向上を視野に入れた取り組みは一方で行うべきでもある。

④:津和野高校と、その立地する津和野町とをより多方面で接続し、相互補完する関係を作る案。地域の課題解決と同時に、多様化する社会で生きていける人財育成に取り組む案。大きなことより、まず、取り組めることから取り組んでいこうとする案。上記2案の良いところを抽出しながら、津和野高校魅力化関係者に足りない視点を加えたアイディア。全国規模で見ても、同一案は無く、津和野であるが故に行える案。 


 現在議論されている案、後援会が推し進める案、僕が提案している案など列記してみました。詳しい考察は次項で行います。

6)一貫教育
 まず、一貫校の種類が3種類あることを把握しなくてはいけない。


①:同一学校型(中等教育学校)
中学校の課程と高等学校の課程を統合した一体の学校。中学校に相当する前期課程と高等学校に相当する後期課程がある。前期課程を修了すると中学校を卒業したものと同じ資格
を持つ。通常後期課程の募集は行われないが発足当初は生徒を募集することがある。

②:併設型(中学校・高校)
同じ設置者(都道府県・市町村など)が中学校と高等学校を設置して接続するタイプ。中学校から高等学校へは無選抜で進学することが出来る。また高等学校は外部からの募集も行う場合もある。

③:連携型(中学校・高校)
設置者が異なる中学校と高等学校が連携して教育を行うタイプ。中学校の教師と高校の教師がチームティーチングを行ったり、教育課程をスムーズに接続したりする。連携中学校から高校へは簡便な試験で選抜する。また高校は、一般の試験で、他の中学校出身者を受け入れる。




例)島根県立吉賀高校の場合
 津和野町のお隣、吉賀町では県立吉賀高校と町内中学校、ひいては町内小学校との連携授業を中心とする『連携型』一貫教育を行っている。一貫教育の成果の有無は別にして、入学者の囲い込みには成功している。
 加えて、益田圏域で普通科高校の統廃合を考えるとき、益田高校・津和野高校・吉賀高校の3つの高校が対象校として浮上するが、吉賀高校が統廃合される可能性は少ないのでは無いか、というのが私の見解で ある。(県職員にもヒアリング済、ただし公式発表では無い。)
 その理由としてあげられるのが、吉賀町から益田高校には容易には通えないことが挙げられる。津和野町 の生徒は汽車に乗れば益田まで30分足らずで通学可能であるが、吉賀町からは汽車では通うことができない。県が高校に通えない地域を作るとは考えにくいため、吉賀高校が統廃合される可能性は非常に低いと言える。また、統廃合されたとしても、分校として吉賀高校の校舎が使われ続ける見込みがある。故に、町内の中学生を囲い込み、吉賀町民に対する吉賀高校の存在意義を高める方策に打って出れるのである。

では、津和野町ではどうか

 津和野町が一貫教育の残された道の一つである『連携型』一貫校を採択し、推進したとし、町内の生徒の囲い込みを行ったとしても、それがすなわち魅力化に繋がるとは考えにくい。
 津和野町の中学卒業者数が減少すれば(することは目に見えているので あるが)津和野高校の統廃合は避けられない。『連携型一貫教育』は津和野高校にとって『行われればいい』ものであるが、『行われれば魅力化が達成する』ものではな く、抜本的な解決にはならないだろう。

7)学力向上
 学力向上を魅力化の第一義の指針に掲げる案。進学実績を高め、それにより全国から生徒を募集しようとするもの。現状維持案よりも浅はかな案である。片田舎の一県立高校が学力で都市部の私立高校にかなうはずがない。
 また、津和野町内の中学生がそのような高校を求めているという統計も出ていない。現実的な視点が欠けた、短絡的で、これまでの『失敗』を全く活かしていない案。
以下、この論拠を示す。

論拠①:実情にそぐわない
 サマースクールで津和野町内の中学生の勉強を指導したが、津和野町の中学生の学力レベルを考えるととてもじゃないが、津和野高校を進学校になどできるわけがない。津和野高校が進学校になれば、『進学校を求める生徒』の入学者数は増えるかもしれないが、それ以外の生徒が増えるわけではない。
 そもそも、僕も大阪の進学校出身であるが、都会の進学校は中学時代からの『競争』に『勝ち抜いた』生徒が集まる高校であり、『競争』も『勝ち負け』もない津和野町内で育った生徒がそのような世界で『勝ち抜ける』はずがない。
 むしろ、学力以外の面で都会の学力一辺倒の人間に、総合力で勝る人財を育てられる環境であるにも関わらず、学力一辺倒の魅力化を行うのは愚策と言わざるを得ない。

論拠②:益田圏域と都市部との比較
 前回の記事でも指摘したが、津和野高校は『文理対応』と『就職支援』『公立大学進学』を学力における魅力と掲げるが、これは『益田圏域において』の話である。
 文書内に、益田圏域と都市部との比較を示した。津和野から通学可能な高校は全部で6校であり、これに対し東京都中野区から通学可能な高校は200校以上ある。ここでは、『文系特化』『理系特化』『就職に強い』『国立大学進学』などの高校があり、津和野高校の強みなど一蹴されてしまう。全国募集を考えるのであれば、これらの高校に勝る程度の学力を備えなければならなくなるが、その場合、有名な灘高校やラサール高校のような進学校になるということであり、現実的に可能なはずがない。
 再々、指摘することになるが、『幅広い進路指導』は津和野高校の専売特許ではない。全国募集という、全国をフィールドに戦うのであれば、益田圏域でのみ通用する『幅広い進路指導』という武器は、取るに足らない微々たるものでしかないのである。

論拠③:過去の失敗
 郷土愛と意欲を伴わない学力向上は、人財の都会への流出を助長するだけである。この減少は今まで津和野町が長年経験してきたものであるにも関わらず、未だに学力一辺倒の方針が良いものであるかのように語られるのは失敗を学んでいないからであろう。
郷土で事を興さんとする愛と意欲なくしては都会に優秀な人材を送るにとどまり、津和野町にとってのメリットが全くと言っていい程なくなってしまう。津和野町はこれまで、優秀な人材を手塩にかけて育て、その人財を都会に奪われ、疲弊してきた。この流れを食い止めない限り、津和野町は疲弊の一途をたどり、挙げ句の果てには町が立ち行かなくなるであろう。
 過去の失敗を活かし、現在の教訓とするならば、学力向上を第一義に掲げることは、町の将来設計とも相反することが自ずと明らかになるであろう。

 では、どのような指針で魅力化を行っていくべきなのか、次項で僕の考えを示します。

8)提案
 IFJの提案として、魅力化の指針を二つ掲げます。

①中身の魅力化:地域と高校との接続・現代社会に通用する人財教育
②外部への発信:全国募集をより積極的に広報する

①:津和野高校単体で魅力化を行うよりも、元々魅力的な町である津和野町を絡める形での魅力化を模索する。地域リソースを最大限に活かせるような取り組みを行い、津和野町のリソースを活かし津和野町の課題を解決するためのテコとなるように学校運営を行う。
 また、現代社会に通用する人財を育成すべく、闇雲に学習を促すのではなく『志』『郷土愛』『社会人基礎力』などをキーワードに、将来に対する動機とヴィジョンを持った上で学習が行えるよう指導体制を整える。

②:津和野高校が全国募集をしているという旨をより積極的に広報する。東京の自治体はもちろん、各種県人会に類する会にも広報を行う。
 また、町内に向けては、津和野高校のありのままの姿を、高校生の目線で発信し、より受信者のニーズに合う形での親切な広報を行う。広報活動の一環として、町内の中学校・小学校とも連携を取り、町内の中学卒業者がより多く津和野高校に入学したいと感じられるような広報を行う。

キーワードは
『地域と高校との接続』
『「志」「郷土愛」「社会人基礎力」を基礎にする学力』
『全国規模のネットワークを活かした広報』
『生徒目線での町内向けの広報』
この4つです。
この指針を軸に、8つの取り組みを今年度中に始動させます。

9)中身の魅力化
①部活動と町内サークル・文化行事との接続
②キャリア教育型公営塾の設置
③総合学習におけるキャリア教育の提案
④寮内における教育プログラムの実施

上記4つの取り組みを始動させます。
詳しくは、文書内9ページ以降をご覧ください。

10)外部への発信
⑤高校生による町内広報紙の紙面作成
⑥東京でのサテライト説明会実施
⑦オープンスクールに合わせた旅行商品の企画
⑧日本各所に津和野高校のポスター・パンフレット配置

上記4つの取り組みを始動させます。
詳しくは、文書をご覧ください。

11)最後に
 津和野高校を取り巻く状況は刻一刻と変化しています。事態は予断を許さない状況になっています。

『ちょっとまってくれ』
『それをやるには、確認が必要で、あそこにも聞かなくては』
『まぁ、次の会議で話し合いましょう』

そんなことを言っている暇はありません。
できることから、まず、一つ一つやっていかなくてはなりません。

高校魅力化も、後援会も、町のその他の事業も、椅子取りゲームじゃないんですよ!
偉いポストに就きたいのなら、よそへ行ってやってください。

高校も、高校生も、中学生も、みんな。
動ける人を求めています。
動きを求めています。


『いまこのとき』なんです。


この時機を逸する。

それは、5年後に、町から子どもたちの元気な声が消えることを意味します。


脅しでも、大袈裟でもなんでもなく。

事実です。

まぎれも無い、事実です。


一人ひとりが、この課題を、自分の課題として捉え、意見し、手を、足を動かすことが大事です。



育った、この町から、高校が消え、子どもが消え、町すらも消えてしまう。

そんなこと、絶対に、してはいけません。


絶対に、だめです。


一人ひとりと、向き合って、津和野高校について語り合い、その中から、本当に取るべき方向性を見出し、取り組んでいかなければならないのではないでしょうか?

消化試合のようなアンケートを行ったり、形だけの住民参加は、逆効果です。
やるなら、徹底的に、足で稼がないと、いけないのではないのでしょうか。



長々と、書き連ねました。
みなさま、ヒアリングの際は、ご協力お願いします。

2 件のコメント:

  1. 長いので、全部を読んでいるわけでないですが、課題を見つけるのは、意外に簡単ですが解決策を見出だすのが困難。
    ただ、高校を注視することも大切ですが、町民の生活にも目を向け欲しいです。例えば、産婦人科がないとか職場・産業がないとか。意外と大きな課題です。
    これらを解決すれば家族が増えることが予測されます。

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  2. 特に行政の体質や中等教育レベルの実態について踏み込んだ点を含め、骨太の分析を頂いていると思います。
    詳細なデータを持ち合わせていないため具体性に欠けますが、一案として付け加えるならば、一部地方大学で見られる公設民営型に近い形での「私立学校化」も視野に入れるべきとの意見です。
    基本財産たる校地他は県からの現物寄付として、当座の運営に必要な資金は町内外有志から募る。おそらく学生数からランニングコストは然程大きくなく、同程度規模の他学 (出来れば都市部を参照したい)から類推は可能かと思います。
    (政権運営の担い手がどうなるかで不透明さは否めませんが)現行の修学支援制度に県及び町からの独自補助を組み合わせれば、学費負担増加をミニマムにする工夫も出来るかもしれません。
    進学する価値のない大学が増える中で、無理に進学実績ばかりを追わない。アベレージではボリュームゾーンたる中程度少し上の入学偏差値を目指しながら、教員選定の自由度を確保し、県外からの募集にもより積極的に取り組める。幸い私立学校の肝となる建学の精神は作りやすい素地もあると考えます。
    あとは郷土に対するステークホルダーの思いにかかってくるのではないですかね。法人個人を問わず少額であっても寄贈により有志に名を連ねることで、「おらがまちの学校」であるという認識の醸成は出来るのではないでしょうか。
    教育長に有能な文科省関係者を招聘した努力は素晴らしいと思いますが、県立高校である限りは県の学事所管の話であり、どれだけ島根県の協力と理解を得られるかだと思います。
    Innovation For Japanの皆様の益々のご活躍に期待しています。

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